【流山市医師会 市民公開講座】
2018.9.23
安心して生きられる未来への処方せん
外科医
NPO法人医療制度研究会副理事長
日本医学会連合労働環境検討委員会委員
本田 宏 医師
はじめに
9月23日、流山市文化会館大ホールに、NPO法人医療制度研究会副理事長、前埼玉県済生会栗橋病院院長補佐の本田宏医師をお招きしました。
当医師会では、ここでしか聞けない講演を企画し、外科医ではっきりと意見を述べる本田氏をお呼びしました。
「難しい話を分かりやすく楽しく」と、作家の井上ひさしは書いていましたが、まさにその通りでした。
医師の働き方改革が先送りされたことから、日本の医師不足が日本の医療政策と大きくかかわっていることをお聞きしました。
本田氏は、はっきりものを言いすぎてマスコミからお呼びがかからなくなったといいながらも、全国で講演を行い、著書やネットで情報発信されています。
講演は、パイロットになりたかった先生が「戦争になったら真っ先に戦地に行くことになるのでやめてほしい」というお母さんの涙で医師になった話から始められました。
福島県出身の先生には、戊辰戦争から原発事故までの歴史がつながって、今年明治維新150年を機会に、歴史からの視点で今の日本の社会保障を見る視点を示されました。
講演内容
あなたががんや認知症になっても困らない医療とは
【諦めずに明らめる4つのポイント】日本医療・社会保障体制の実態
初めに、現在の日本の医療費について、先進国で最低水準という事実を国際比較から示されました。
厚生労働省は2025年に国民医療費が日本経済を圧迫すると予測し、医療費の抑制を重ねてきました。その結果、日本の医療費は世界水準でみると先進国で対GDP比が米国17.2%に対し、日本は10.9%(この中には介護費などを含む補正値)。
医師数についても、日本の医師の平均は240人/人口10万人と医師の偏在ではなく、OECD諸国の平均人口10万人対医師数で320人より少ないのです。
全国では10万人の医師が少ないことになり、我々医師の過重労働は医師数を増やさない限り続くという暗い現実を突きつけられました。
東京医科大の女性合格差別問題については、ここ20年間日本の女性医師の国試合格割合は全国で30%と増加しておらず、現在の全医師数に占める女性割合が世界でも最低水準であると指摘、この問題が一医科大学にとどまらない可能性を示されました。司会の私も女性医師の一人として見過ごすことができない事実と受け止めています。
温故知新:明治から続くクレプトクラシー(収奪・盗賊政治)
現在の政治機構がいかにして作られたかを理解するために、今教えられているテレビドラマなどで伝えられている歴史は「勝者の歴史」だと気づかなければならないと話されました。
明治維新を支えた龍馬を支援したグラバーは、アヘンマネーを後ろ盾にしたジャーデイン・マセソンJardine Matheson商会から日本に派遣されていた。
民主主義政治を目指した江藤新平、赤松小三郎などがいたことは歴史から忘れられている。
財界にも渋沢栄一のような経済の利益だけではなく、国民の福祉を考えた人がいたのです。
カギを握るのが教育!
①デンマークの初等教育で重視するもの:「自立と民主主義」を教えること今回の講演を受けて
日本の医療や社会保障を充実させるためには一人でも多くの国民が正しい情報を共有して、よい意味で政治を考え続けることが不可欠です。これからも真実を語る講演を続けていきたいと締めくくられました。
あっという間の1時間でした。「帝国主義」いや「定刻(守る)主義」で終了しました。
ドイツ人のアルフォンス・デーケン氏も講演中にユーモアあふれるフレーズをちりばめておられました。
本田氏の講演は、アンケートでは「楽しく聞きました」「時間が短くてもっと聞きたかった」というご意見をいただきました。
人の集中力は60分が限界とされていますので、講演をコンパクトにしていただきました。
ジョークをかなり削っていただきました。
もっと知りたい方は、本田宏氏のインターネット発信をご覧ください。
(文責 / 担当理事 戸倉直実)