医療の現場から

Vol.17 肺炎球菌ワクチン

肺炎球菌は、鼻腔や咽頭の常在菌で、通常は無毒ですが、重度の感染症を引き起こすこともあります。日常生活で起こる市中肺炎の約1/4を占め、60歳以上の人の肺炎の約半分を肺炎球菌が占めています。肺炎球菌性肺炎は、ほかの肺炎に比べて、重症化しやすい特徴があります。約2割の人に菌血症が起こるといわれており、その結果、髄膜炎や感染性心内膜炎などを起こし命にかかわることもあります。特に重症化しやすいのは、65歳以上の高齢者、心臓病や腎臓病など慢性疾患のある人、もともと呼吸器系の病気のある人です。

肺炎を防ぐには、かぜやインフルエンザにかからないことです。人ごみをなるべく避け、うがいや手洗いを徹底し、ウイルスの体内への侵入を防ぐこと、体の免疫力を高めておくことも大切です。抵抗力が低下している高齢者や慢性の病気のある人は、まずインフルエンザの予防接種を受け、インフルエンザの予防をすることが大切です。

して、肺炎球菌ワクチンも接種することをお勧めします。肺炎球菌ワクチンは、肺炎になっても菌血症を予防でき、重症化を防ぐ効果があり、肺炎による死亡が約60%減ると考えられています。日本では、肺炎球菌ワクチンの接種は、一生に1回しか認められておりません。肺炎球菌ワクチンの効果は5年ほど続きます。ワクチン接種は、健康保険が適用されず、費用は全額自己負担ですが、ワクチン接種が医療費の削減にもつながるものと考えます。肺炎球菌ワクチンは、季節を問わず接種が可能ですが、詳しくはかかりつけの医師にご相談ください。

(文 / 椎名和彦)

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