医療の現場から

Vol.16 麻疹がまた流行しています

麻疹(はしか)ワクチンの2回接種がなぜ大切なのかについてお話します。

ことし1月、流山の中学校と小学校で相次いで3名の麻疹患者が報告されました。さらに4月にも小学生の麻疹患者が発生しています。東京でもすでに36名の発生が報告されており、集団発生が危惧されています。

2005年9月、WHOは日本を含む西太平洋地域の麻疹を2012年までに排除しようと立案しました。それには、95%以上のワクチン接種率が必要です。昨年度から始まった麻疹風疹混合ワクチンの2回接種も、これに呼応した対応です。国立感染症研究所の情報センター調査では、1回の麻疹ワクチン接種率は1歳台で70%。小学校入学時で92%です。つまり、100名の児童の学年で8名のワクチン未接種者がおり、ワクチン接種しても麻疹にかかる可能性のある人が接種済みの中に6~7%(5~6名)存在しますから、計100名中13~14名集団発生の温床がいることになります。これを限りなく0名にすることで集団発生を抑制できる、つまり、2回目の接種が必要なのです。ことしの新1年生を調査したら81.1%しか麻疹ワクチン2回目を受けておりません。これでは、まだこの学年の集団発生を予防できません。まして小学2年生以上の学年集団では、1名の発生が集団発生に拡大する危険性はより大きいのです。

麻疹の危険性は、ワクチン未接種の乳幼児に感染した際に顕著です(死亡率0.3%)。集団発生を予防し、麻疹患者が家庭の乳幼児に感染を拡大させないためにも、麻疹ワクチンの2回接種率を上げましょう。未接種で麻疹にかかったことのない人は早急にワクチンを受けるように努めてください。2004年に激減した麻疹がことし、また流行し始めています。学校医の先生方も各校での接種率を上げるようアピールしましょう。

(文 / 徳重愛二郎)

Vol.15 血管の検診を受けよう!

Vol.17 肺炎球菌ワクチン