流山市医師会について

流山市医師会について

  • 沿革・概要
  • 役員紹介
  • 活動内容
  • 公開講座・講演会
  • 医師会コラム

公開講座・講演会

【流山市医師会 市民公開講座】

2011.09.23

放射線からどう身を守るのか ~福島原発事故と放射線被ばくについて~

日大歯学部専任講師(放射線防御学 環境放射線学) 野口 邦和 先生

2011年9月23日(祝)に流山市生涯教育センターにおいて「福島原発事故と放射線被ばくについて、放射線からどう身を守るのか」と題した第2回流山市医師会市民公開講座が開催されました。会場の収容人数が限られていたことから、事前に受付して入場整理券を発行し、ロビーに第2会場も設けたので、特に混乱なく終えることができました。

流山市医師会は、昨年度から一般市民向けの健康、医療問題を扱った公開講座を流山市との共催で始め、昨年度は流山市文化会館にて「健康食品の安全性と効果について」と題した講演会を開催しました。

今回は、3月の東日本大震災以来、現在も続いている福島原発事故と放射線被ばくの問題を取り上げました。流山市は、「ホットスポット」といわれる放射性セシウムの空間線量が周辺地域と比べて高くなっている千葉県北西部に位置し、8月には放射線量の高かった学校、保育所、公園などで除染作業が行われました。

講師には、テレビ、新聞でも積極的に発言されている野口邦和先生をお招きしました。先生は、1952年千葉県の生まれで、東京教育大学大学院理学研究科修士課程放射化学専攻を修了、理学博士となられ、長年にわたって放射線防御学、環境放射線学の研究に携わってきました。はじめに、井崎流山市長、町谷流山市医師会会長の挨拶の後、講演に入りました。

講演内容

講演動画はこちら
講演の様子はこちらでご覧になれます

講演内容の一部を要約すると、原子炉から放出された放射線量はチェルノブイリの1/6から1/7で、かつ半分が風向きの関係で海に落ちたので、地上に落ちたのはチェルノブイリの1/12から1/14になる。大地の汚染は今後、半減期が2.065年のセシウム134と、30.17年のセシウム137が大部分を占めるが、全放射線量の73%が半減期の短いセシウム134であったことから、6年後には放射線量は約1/3まで減少すると予想される。

よく30年間でやっと半分になると誤解されているがそうではない。半減期が約2年と短いセシウム134が、約3/4もあったことが不幸中の幸いであった。除染をして下げれば、6年後に更に低下すると予想される。チェルノブイリではこの比率が逆であったことから、25年たった今でもなかなか放射線量が減っていない。

流山市は、避難すべき年間20mSVを超えるようなとんでもない線量ではなく、避難する必要は全くないこと、地域の線量をこまめに測定して、0.5μSV/hr以上の高いところは除染することが必要と述べました。

最後に、放射線防御学の原則は、自然放射線と医療用放射線以外の「無駄な」放射線はできるだけ浴びない、被曝量はできるだけ低くすべきと考える。それがすべての原則であり、理想であると強調されました。

Q&A

事前に市民から寄せられていた質問に対して以下のように答えていただきました。

福島県の小児についての甲状腺被ばく検査の結果が出ましたが、これは、どう解釈したらよいのでしょうか?
(注釈:最大で0.1μSV/hrのごく微量の放射性ヨウ素が45%の小児に認められた。)

3月24~30日に検査したのに8月中旬すぎに発表されたのは驚いた。検査結果は翌日には集計されていたはずなのに何故なのか?また、将来にわたる内部被曝の推計値が出されず、その時の測定値である毎時何μSVという発表の仕方にも驚いた。国民が最もわかりにくい数値の出し方をしたとの印象を受けた。

東北産の野菜は子供には食べさせない方がよいと某教授の発言がありましたが、今、流通している食品は必ずしも安全なものとはいえないということでしょうか?
(注釈:この教授の発言に対し、名指しされた「ホットスポット」の地域である岩手県の一関市長が抗議。一関市のホームページに、しいたけ、ネギ、リンゴなどの農産物の検査結果は公開されていて、放射性セシウムは検出されていない。)

今、一番汚染されている福島県産の野菜の放射線検査結果をインターネットでみることができるが、規制値よりとんでもなく低いか、または検出限界以下である。規制値を越えているのは露地の「きのこ」ぐらい。よって、隣県の岩手、宮城の野菜が規制値を越えているとは考えにくい。もちろん、東北各県でも検査は行われており、その結果は公表されている。心配ならよく洗う、ゆでるなどの工夫で放射性物質はかなり取り除ける。

今後、福島県では、800億円をかけて全県民に対しての長期的な健康調査を今後実施していくとのことですが、「ホットスポット」と呼ばれる流山市でも同様な調査が必要でしょうか?

健康調査は時間もお金もかかることなので、流山市の汚染状況がどの程度なのかをまずしっかりと調べる必要がある。その結果、汚染がひどくなければ、健康調査の必要はない。もし、汚染のひどい地域が見つかれば除染をし、その地域だけ調べる必要があるかもしれない。福島県では、市町村が一軒一軒の汚染状況を把握している。
(注釈:その後、年間5mSV以上の地域は国の責任で除染するとの方針が環境省から示された。)

マウスなどの動物実験の結果、低線量の放射線は、むしろ体によいとの「ホルミシス効果」の説をとなえる研究者もいますが、どのように考えたらよいでしょうか?
(注釈:元東京電力副社長の加納時男自民党元参議院議員が、事故後の5月5日付朝日新聞で、「低線量の放射線はむしろ健康によいと主張する研究者もいる」と述べた。)

あくまで動物実験(マウスやショウジョウバエなど)のデータから導きだされたもので、人間については照射実験ができないことから全くデータはない。また、今回の事故を引き起こした東京電力などの電力業界が設立した(財)電力中央研究所やそこからの予算を使った研究、発表であり、信頼性に疑問がある。よって「動物実験の結果だけで、人についても低線量の放射線が体によいといえる」というのは言いすぎである。

時間の関係から、会場からの質問は、質問用紙のみとし、講演終了後に質問用紙を回収し、講師に答えてもらいました。環境汚染から、魚などの食品、妊娠してよいか、引っ越す必要があるかなど、多くの質問が寄せられ、それぞれに丁寧に回答していただきました。また、最近出版された「放射能からママと子供を守る本」野口邦和著、出版元:法研が紹介され、ロビーでも販売されました。

低線量の放射線被ばくによる健康の影響は、まだよくわかっていない領域であり、放射線の影響を受けやすい子供さんを抱える市民の不安は解消されておらず、日本医師会も、小児の放射線被ばく線量の減少に最大限努力するように国に対して要望しています。最後に、科学的に解明されて分かっていることと、分かっていないことを区別して、感情的な風評に惑わされてしまうことがないように、冷静に対応することが必要とまとめの挨拶があり、終了しました。

(文責 / 流山市医師会担当理事 川村 光夫)

一覧に戻る

ページ先頭へ