医療の現場から

Vol.12 不整脈

私たちの心臓には規則的に電気を発生させる発電所があり、ここから出た電気信号が心臓に本来備わっている電気経路を通り、心臓を収縮させることによって規則的に拍動しています。心臓の拍動は手首の動脈を指先で触れると脈拍として感じ取れますが、心臓の電気系統が故障すると脈拍は乱れます。この脈拍が不規則なときや異常に速いとき、また異常に遅いときを不整脈といいます。

不整脈は何らかの自覚症状を伴う場合と伴わない場合がありますが、心電図をはじめいろいろな検査で治療が必要かどうかを判断します。治療が必要な不整脈のなかで怖いのは、高齢者によく見られる心臓の上半分の筋肉が震える心房細動というもので、脈拍は速く、規則性がまったくなく、時には血栓といわれる血液の塊が心臓の中にでき、それが脳の血管に詰まり脳血栓を起こすことがあります。

また、異常に速い脈拍は心臓が異常に速く拍動していることを示しており、この状態から心臓は心室細動といって単に細かく震える状態に移行することがあります。心室細動では血液が循環しないため、突然死を起こします。この心室細動は、運動中や睡眠中に突然死する原因のひとつです。心室細動による突然死を防ぐ対策として、一般人が使えるAED(自動体外式除細動器)と呼ばれる、自動的に心室細動を止める装置の普及が望まれます。

AED(自動体外式除細動器)

つぎに、心臓の発電所の故障などの場合に見られる異常に遅い脈拍は血液循環が悪くなるため、息切れや失神などを起こし危険です。現在、不整脈の治療は抗不整脈剤やペースメーカーの装着、高周波で不整脈の原因となっている場所を焼灼すしょうしゃくるアブレーション、心室細動を感知すると自動的に停止させる装置の体内植え込みなど、大変進歩してほとんどの不整脈に対処できます。不整脈が見つかったらそれがどういった種類のものか、かかりつけ医を受診し正確な診断を受けましょう。

(文 / 鎌田 康夫)

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Vol.13 ピロリ菌と胃・十二指腸潰瘍