医療の現場から

Vol.04 風邪に伴って起こり易い小児の中耳炎

中耳とは、鼓膜の内側で太鼓の内部の様な空洞ですが、鼓膜の振動を増幅して神経に伝える重要な部分です。中耳は、耳管でノドの上部(上咽頭)につながっているため、鼻やノドの炎症を起こすと炎症が中耳に及びやすいのです。子供は風邪を引きやすく、上咽頭にアデノイドという扁桃腺に似た組織があるために炎症を起こしやすく、また膿性の鼻汁が流れ込むため、耳に逆行性に細菌が入ります。

急性中耳炎では、炎症性分泌液と細菌が混じったものが、内側から鼓膜を圧迫するなどして痛みを起こします。急性中耳炎に似た病気に、滲出性しんしゅつせい中耳炎があります。炎症の程度や種類の違いがあり、こちらは痛みはあっても軽度ですが、粘りのある液体が中耳に溜まって聴力を障害しますので、耳をさわっている、テレビの音を大きくしたがる、呼びかけに反応しないなどの徴候があります。この二つの中耳炎は互いに移行し、なかなか治癒しないことがあります。夜中など突然の耳痛に困惑することもあると思いますが、治療にそれほどの緊急性はないものの、翌朝など速やかに専門医に受診する事が必要です。

急性中耳炎の治療は、風邪の治療と共に抗生剤の服用が一般的ですが、抵抗性を持つ細菌が増えたため薬の選択も難しく、時には鼓膜切開が必要です。一方、滲出性しんしゅつせい中耳炎は、症状が難聴のみと軽度であるため、耳管通気療法で経過をみることも多いのですが、長期にわたることや別の病気に発展することもあり、鼓膜換気チューブの留置などが必要になることもあります。治療によって子供の性格が明るくなったり、はしゃぐ事が経験されますので、専門医と十分に相談し、お子さんに豊かな音の世界を取り戻してあげてください。

(文 / 仲秋功司)

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